東京高等裁判所 昭和29年(う)2441号 判決
被告人 益子康
〔抄 録〕
控訴趣意第三点について。
原判決が被告人の判示(一)、の事実を認定する証拠として証人小池一男の原審公判廷における供述を引用していることは所論の通りであり、又記録を調査すると、所論指摘の通り同証人の宣誓書と原審第一一回公判調書手続の部末葉との間に契印を欠いていることが認められるのである。しかし同公判調書手続の部の記載によると同公判期日において裁判官は先づ出頭した証人小池一男を別紙調書記載の通り尋問した旨明記されていてその公判調書手続の部末葉の直後に証人小池一男の宣誓書、次いで同証人の尋問調書が順次編綴されていることが認められるのであるから、右宣誓書及び証人尋問調書は調書作成者である裁判官により公判調書手続の部記載事項の順序に従い正当に綴り込まれたのであるが宣誓書と公判調書手続の部末葉との間の契印を遺脱したものとみるを相当とするのである。右のように契印を欠いたことは刑事訴訟規則第五八条第二項に違背することはもちろんであるが、それが調書作成者である裁判所書記官により正当に調書の一部として綴られたものと認め得られる以上、右のように契印を欠いたことだけにより直ちに同証人の尋問調書がその効力を失うものとする規定はないから、原判決が同証人の供述を判示(一)、の事実認定の証拠として引用していても、右の刑事訴訟規則の違背が判決に影響を及ぼすものと認めることはできないのである。それ故原判決の訴訟手続法令違背を主張する論旨は結局理由がない。